『王立宇宙軍』個人研究 新聞編

(英語版はこちら)

この間日本旅行が終わって帰国しました。旅行中で数日図書館で1987年3月刊行の新聞を映画感想コラムなどを調べようとしました。何故かというと『王立宇宙軍』が公開当時の一般人(というかアニメファンじゃない人)にどう思われたのかずっと前から気になっていたから把握するために公開日の辺りに新聞に載っている感想を見つけようと思ったんです。もちろん新聞にレビューが載っていてもレビューの担当者がアニメじゃないわけではないがアニメ雑誌より一理あるじゃないかと。

残念ながらほとんどの新聞には映画感想コラム自体は全然載っていませんでした。

さて、どうやって調べたのかと気になる方がいらっしゃるでしょう。つまり、ある1987年3月の新聞縮刷版の索引をチェックして映画感想みたいなものが見つからなかったらそこでやめて次の新聞縮刷版に移りました。最後の本棚に収納された新聞縮刷版までこのように調べました。記憶が少し曖昧なんですが残念ながら『王立』広告何枚見つかった一方、二、三紙にしか映画感想コラムが載っていなくて、一紙にしか『王立』の感想が載っていなかったんです。その一紙は読売新聞でした。

調べた新聞は以下の通り。

  • The Japan Times
  • しんぶん赤旗
  • 朝日新聞
  • 公明新聞
  • 埼玉新聞
  • 産経新聞
  • 下野新聞
  • 中国新聞
  • 中日新聞
  • 日経産業新聞
  • 日経流通新聞
  • 日本経済新聞
  • 北海道新聞
  • 北國新聞
  • 毎日新聞
  • 山梨日日新聞

何故映画に関する内容なんか載っているわけない新聞まで調べたのかというと…まあ折角日本の図書館まで調べに来たんですから念の為チェックした方がいいと思ったんです。

もちろん読み流しすぎた可能性もあるし、在庫していない他の他方紙もあるし、4月や5月刊行の新聞に載っていたかもしれないし、徹底的な調査とはいえません。時間切れでしたから次の機会でまた調べようと思います。

とはいえ、第一目的を達成していなくても王立関連の切り抜きが出てきてその切り抜きと非常に短い概要と引っかかった部分をここに投稿したいと思います。

(あまりご期待しない方がいいと思いますが…)

画像は左クリックか右クリックメニューで拡大できます。

読売新聞 1987年1月1日 切り抜き

王立新聞広告。画像処理ソフトで組み立てようしたが真ん中に空間が残っているのでご注意を。

引っかかったのは右上に書いてある部分。

アメリカ・スペシャルエンターテインメントツアー
ロサンゼルス(ディズニーランド)
サンフランシスコ6日間の旅

168,000円の価格で、つまり一般人も有料で参加できたとは全く知りませんでした。報道陣や関係者のみだろうと思いました。

左下に書いてある部分。

お年玉クイズ
オネ○ミスの翼
上の○にあてはまる文字はなんでしょう。
●映画公開を記念して実施される、あのチャイニーズシアターのプレミアム試写会ツアーへ全日空機で2名様をご招待。

当選された方にはすごくいい思い出になったのでしょうね。☺️

あと、当時のバンダイ社長、山科誠氏のコメント。

バンダイ第一回自主製作作品・製作にあたり

 新年あけましておめでとうございます。「夢・クリエイション」バンダイはこのスローガンのもと、ホームエンターテイメントビジネスをめざし、そのひとつとして映像事業に取り組んでおります。「オネアミスの翼」は、バンダイにおける初の劇場用長編映画として私共が玩具で培ってきたノウハウと、若手クリエーター集団の才能と情熱を結集して鋭意、製作中です。この作品は幅広い年齢層の方々に見て頂ける本格的エンターテイメント作品で、皆様方に「見てよかった」という深い感動を味わって頂けるものと確信しております。皆様方のご支援、ご協力の程、宜しくお願い致します。

読売新聞 1987年2月20日 切り抜き

『王立』新聞広告

5万光年の彼方…とどけ、少女リイクニの祈り!
★迫りくるオネアミス滅亡の危機に立ち向かう 聖少女リイクニ。汚れなき愛と祈りを胸にいま、リイクニは冒険の翼に乗った—。

アメリカ騒然
日本映画初のワールド・プレミアを実現!
■2月19日、ロス・チャイニーズ・シアターにて特別試写会が開催された!G・ルーカス、トム・クルーズ、マドンナ…世界映画人が映像に驚き、音楽に酔い知れ、愛のドラマに泣いた!アメリカ大観衆が日本のスーパー・アニメに圧倒され、嵐の拍手が沸いた!

凄い!面白い!驚いた!
「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」の名匠

宮崎駿さんは…

おめでとう!よくやった!と最大級の讃辞を贈りたい。見終えた僕は喜々とした気持ちで、僕らの次の世代の作り手がやっと登場したなと感じました。もう一度、よくがんばった!

お待たせしました!
★アニメ史を変える名作!日本中がいまオネアミス・ブーム!

ジョージ・ルーカス、トム・クルーズ、マドンナなどが参加なさったことは初めて知りました。ですが、あのイベントを取り上げられた当時の取材や広告はどれくらい事実なのか疑わしいと思います。

ずっと前から東宝東和の有名な広告戦略(つまり「愛」や「冒険」というキーワードを誇張していた嘘広告)は知っていました。例えば本編にはない、「愛の奇跡…信じますか」というセリフが出る劇場特報を何度も見たので広告戦略の事は史実として分かっていましたが、自分の目で新聞に載っている『王立』の広告を見たまではそれ程把握していなかったんです。「愛」のイメージがよく普及されたな…と

(例のセリフが出る劇場特報)

史実として知っていたといえば、ハリウッドでの上映は何の目的なのかご存知ですか?実際アメリカ人より日本人の方に宣伝するための取材が目的でした。参加された米国アニメファンから話されてたんですがシンプルに日本取材に取り上げられた「称賛」などの海外反応は誇張です。
(まあ、正直英語ネイティブの視点から見たら日本広告には誇張が日常茶飯事ですが)

あと、上映で実際どれ程拍手されたのか、どれ程圧倒されたのかをさておき、史実は既に知られています。残念ながらあの上映が終わってからマイナーな熱狂的なファン以外、上映イベント自体は忘れられかけてアメリカの一般人に知られていないで消えました。一方であの頃の一般人まで届けた日本産アニメは世界中で有名な『AKIRA』でした。

(因みにAKIRAというアニメが聞いたこと無い僕の世代の海外アニメファンが少なくありません。驚きましたか?笑)

読売新聞 1987年3月4日 切り抜き

春のアニメ上映のお知らせ。

アニメの春到来

14日から一斉公開

 春休みを前にして、十四日からアニメ映画が一斉に公開される。
 まず、松竹系は、アクションものの「バツ&テリー」は、高校生バッテリーが、恋に野球に青春を燃焼させる痛快編。一方、テレビシリーズで人気を集めた「ダーティペア」は、プロポーション抜群の二人の美女が、怪事件解決のため、宇宙を駆け回る。
 一方、東宝洋画系が「オネアミスの翼・王立宇宙軍」。未来都市を舞台にした愛のドラマで、総製作費八億円という大作だ。音楽は坂本龍一。東宝系では、おなじみの「ドラえもん/のび太と竜の騎士」「オバケのQ太郎/とびだせ!1/100大作戦」「プロゴルファー猿/影の忍法ゴルファー参上!」が出る

正直影の忍法ゴルファーが気になります。笑

読売新聞 1987年3月6日 切り抜き

『王立』新聞広告

ついにアメリカが驚いた!
●2月19日、ロスアンゼルスで日本映画初の海外試写会を開催!
大観衆は息を呑み、会場はやがて拍手の嵐につつまれた!

ノア・ハザウェイ(ネバーエンディング・ストーリー) いつまでも大切に心の中に留めておきたい素晴らしい作品です。本当に楽しかった。

ニーノ・R・ジャメロ(ルーカス・フィルム副社長) リューイチ・サカモトの音楽とアニメSFXによる映像は忘れられない美しさだ!

オネアミスで何が起ったのか!!
●迫りくるオネアミス滅亡の危機!汚れなき愛と祈りを胸に、いま少女リイクニは冒険の翼に乗った!

松本典子さん(歌手) オネアミスは、過去や未来や夢がひとつになった、知らないけれど知っている世界。すごい。

不思議映像の秘密!
●映像テクノロジーの最高スタッフが完成させたアニメSFX!

宮崎駿さん(「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」監督) よくやった!と最大級の讃辞を贈りたい。次の世代の作り手の登場を実感しました。

大友克洋さん(「アキラ」「童夢」作者) キャラクターがイキイキとしているのに感動。彼らは実写以上に人間的だった。

松本零士さん(「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」作者) これぞまさに若者による若者のための映画!その創造のエネルギーには感服しました。

「ニーノ・R・ジャメロ」という名前を検索したら何も出てこなかったが「ニーロ・ロディス=ジャメロ」が出てきました。「ニーロ」は美術監督としてスター・ウォーズに参加なさった方だそうです。当時のルーカス・フィルム副社長って誰なのかと調べようとしたんですが何も情報が見つからなかったです。広告の担当者が名前や役割を間違っただけなのかもしれません。

読売新聞 1987年3月13日 夕刊 切り抜き

これしか当時の新聞に載っている『王立』感想が見つからなかったです。公開日の前日に新聞に載っていたレビュー。批判している感想も含まれているのでただの宣伝記事ではありません。

既にSNSで王立ファンに共有されている切り抜きですが、SNS垢を登録していない方にもご覧になれるようにここに貼っておきたいと思います。

芸能

スクリーン

「オネアミスの翼」
(バンダイ)

丁寧に描き立体感

現代の社会像を注入

登場人物の末端まで見事に描き分けたキャラクター・デザイン、超遠景から近景まで丁寧に組み立てた立体感にみちた映像、アニメーションとしては、素晴らしい出来ばえだ。せりふも表情も自然で、動きも洗練されている。
 主人公はオネアミス王国宇宙軍所属のパイロット。しかし、この王立宇宙軍は、世間から無駄金遣いの余計者扱いされていて、隊員は鬱屈(うっくつ)している。
 そこへ待望の軌道宇宙船打ち上げ計画にゴーサインが出る。しらけ気味の仲間に冷やかされながらも、主人公は思い立って宇宙飛行士を志願、猛訓練が始まる。
 「トップガン」的なヒロイック・ファンタジーを期待すると、当てが外れる。きわめて正面きった青年の成長物語である。快楽の追求に走る一方で不満を抱える民衆、それを操る政治。原案・脚本・監督の山賀博之は、現代日本社会への自分のイメージをすべて注ぎ込もうとしている。それも声高にではなく、こころ優しいソフトなタッチで。
 ただ、そうした思いを一本の強力なストーリーにまとめ上げることに成功しているかというと、残念ながらそうではない。間延びして退屈なところもあるし、話がバラバラなまま盛り上がりを欠く悩みもある。
 だが、これだけ金も時間もかかった大作に、既成のアニメのパターンに寄り掛かることなく、飾りの無い率直な自分のイメージを貫いたところは、あっぱれといわねばなるまい。(寧)
 —十四日からニュー東宝シネマー、新宿オデヲンほかで上映。

朝日新聞 1987年3月20日 夕刊 切り抜き

坂本龍一氏が王立の製作についてのコメントが載っていた朝日新聞の切り抜き。読みにくくて申し訳ありません。又の機会でもう一度コピーを取りたいと思います。

共感とズレを感じながら、楽しくやりました

(坂本氏が王立を語ること以外)引っかかったのは新聞の日付、1987年3月20日。つまり、公開日の後で、あの時点ならガイナックスとの関係は既に崩壊されているじゃないかと。なのに読んだら製作に対して割とポジティブなコメントなので、取材日はいつなのか気になります。

もしかして映画はまだご覧になっていなくて自分の指示が無視されていることはまだご存知なかったからまだ嫌な経験になっていなかったわけ?

或いは何かの契約で王立についての質問を答えせざるをえなかったわけ?そうでなくてもシンプルにプロだから愚痴などはおっしゃらないだけかもしれません。

どの道、言えるのは『王立』公開後本人からこのようなコメントは実に珍しいです。

読売家庭経済新聞 1989年3月23日 切り抜き

金曜ロードショーの広告

3月24日金よる9時

金曜ロードショー
オネアミスの翼~王立宇宙軍~

「アニメSFX」ついにドルビーサウンドで初登場!
実写を越えた迫力の描写、実物と見まがうばかりの背景美術、そして坂本龍一による魅力あふれる音楽で公開されるや大ヒット。
初の宇宙飛行士となった青年の愛と勇気の物語。

原案・脚本・監督/山賀博之
声の出演/森本レオ、弥生みつき ほか

(例の金曜ロードショー放送オープニング。当時、本編の公式タイトルは順番が今のと逆だということを思い出させますね。)

日経新聞 1995年7月26日 切り抜き

山賀博之氏とのインタビュー。ガイナックス初期の頃や王立に触れる内容も載っています。 後半の部分はCGやネット、つまり最先端技術についての意見です。

八七年に製作した「オネアミスの翼 王立宇宙軍」は、日本で最初の原作がないオリジナルアニメ映画だった。

引っかかったのはこの辺りです。

本当でしょうか。60年代の東映動画のアニメ映画には原作がない映画はないのですか?例えば『太陽の王子 ホルスの大冒険』には原作あったっけ?まあアニメ歴史に詳しい方にお任せします。日経新聞ですから恐らく取材の担当者はアニメ歴史の豆知識よりこれからガイナックスがアニメ制作会社としてどう最先端技術を使うのかは伺いたかったじゃないかと。

来月か再来月続く。
(長く延期しないように努力致します…)

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